北九州医療刑務所 国賠訴訟

高裁で逆転敗訴 遺族の原告は上告

 2005年9月、北九州医療刑務所(小倉南区葉山)内第二種独居房で自殺した男性受刑者(当時25歳)の遺族が、同施設を管理運営する国に損害賠償を求めた国陪訴訟の判決公判が11月26日午後、福岡高裁で開かれ、廣田民生裁判長は、被告・国に損害賠償の支払いを命じた1審判決を取り消し、原告の逆転敗訴を言い渡した。高裁判決は争点だった「男性に判タオルと布巾を貸与した事実」について、「日常生活に用いられる最低限度の日用品の貸与制限は明白な理由がない限り人権保護の見地から最小限度に止めるべきであることは明らか」とし、今回のケースは「具体的な制限が必要であったとは認められない」と判断した。

 原告は、1審判決が「民間施設と比較して極めて杜撰なもの」と指弾した「看護日誌」などについて、1審判決の認定事実がなぜ覆ったのかが全く記載されていない点を疑問視しており「(途中で交代した)裁判長は1審が認めた所に触れていない。ちゃんと読んで調べたのか」と話し、12月3日付で高裁判決を不服として最高裁に上告した。判決後の会見で遺族は「無念です。あの子の死は何だったのか」と語った。代理人は「国の主張をそのまま書いているだけ」と批判した。

 男性受刑者は04年12月、覚せい剤取締法違反で実刑判決を受けた。佐世保刑務所に入っていたが05年8月に北九州医療刑務所に移管された。理由は自殺未遂。同9月24日午前11時頃、医療刑務所から家族に電話があり、自殺を図ったとの一報が伝えられた。搬入された小倉南区の総合病院で死亡が確認された。独居房内にある高さ29センチ㍍のタオル掛けに半タオルと布巾と別のタオルを繋ぎ合わせて、首をくくったとされている。

 1審判決は、男性が移送後も幻聴や幻覚を訴えていたことや自殺事故防止措置の施された独居房に収容されていたこと等を挙げて、「自殺防止に向けた措置を講ずるとともにその動静を注意深く観察すべき義務を怠った過失がある」と指摘。さらに医療刑務所の「看護日誌」は受刑者の看護過程を通常、1時間単位で記録されているものと認定。しかし「全く記載のない日もある上、記載内容が1、2行の程度の簡単なものに過ぎなかった。このことから看護日誌は極めて杜撰なものであったと評価せざると得ない」「所長を含めた、医療刑務所の医師、職員全体を挙げて取り組むべき組織的過失というべきものであった」と断罪していた。また担当医師が受刑者自殺前の10日間にわたり診察することがなかった点も「過失」の疑いがあるとした。

 一方で、高裁判決は看護日誌について、「報告すべき事項が存するときのみ記載しているもの」「記載がないことは患者等に症状に悪化はなく問題がないことを示す」「看護日誌、視察表等に記載しづらい事項等について直接口頭で報告を受けることもあった」との理由が挙げ、看護日誌に問題はないと判断しているが、民間施設との比較は一切言及されていない。

(2010年12月11日付)



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