ゼミ講師は現職自衛官

 

   北九州市立大学が全国初

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 北九州市立大学(小倉南区)で09年度から、自衛官による連続講義「防衛セミナー」が実施されている。一般には知られていないが、「全国初」の取り組みとして自衛隊の中で話題になっているという。自衛隊の幹部が大学で単発の講演会を行うことはあるが、単位が付く講義で講師を務めることはこれまで例がない。ゼミを主宰する戸蒔仁司准教授は「安全保障を担う現場のリアリティーを伝えることが出来て、自衛官の口から、国際情勢も見えてくる」と連続講義の意義を話す。自衛官講師派遣などの調整窓口の自衛隊福岡地方協力本部募集課は「安全保障の知識は大学生になるまで習わないので自衛隊の基本的な役割を知ってもらいたい」と話し、広報活動の一環という。

  「ミャンマーの一般的な印象は、軍事政権がアウンサンスーチーさんを自宅軟禁し対立していると思われているが、実際はそうではない。軍事政権がスーチーさんに手が出せないでいる」。7月1日午後、北九州市立大学本館で行われた「防衛セミナー」で大村駐屯地の第16普通科連隊長が講義を行った。学生はもちろん市民の姿もあった。テーマは「PKO参加及び防衛駐在官としての経験から」。1994年のモザンピークPKO派遣や01年の東ティモール派遣、04年は在ミャンマー日本大使館での経験を話した。東ティモールでは他国の軍人から「なぜ日本はアジアでのPKO活動に参加しないのか。アジアのリーダーにならないのか」とよく聞かれたといい、「憲法の制約で出来ない」と答えたという。

  4月から7月まで毎週一回開催される「防衛セミナー」は戸蒔准教授のゼミ。同准教授は、教養科目を重視するため設けられた「基盤教育センター」に所属し、安全保障科目を担当。防衛セミナーを開催するきっかけについて戸蒔准教授は「安全保障を学ぶときに現場の人の声が必要になる。リアリティーが出せず、悩んだこともあった」といい、知り合いの自衛官に相談。自衛官によるリレー講義が実現した。ゼミ生は1~3年生の約40名。1年目の09年度は14回のうち最初と最後を除き、自衛官による講義と基地見学を実施。ただ講師の自衛官は一等陸佐など高級幹部が中心だったため、学生が講義内容を十分理解できなかったという。2年目はその反省を踏まえて、2つのゼミのセット受講を条件とし、火曜日は戸蒔准教授が講義し、木曜日に自衛官の講義を受ける方式に変更。講師も若手幹部を中心とした。

 一方で自衛官による連続講義という全国初の取り組みに加え、計画段階で「田母神発言問題」が起きた。戸蒔准教授は「自衛隊側に丸投げではなく、私が講師の人選など計画に関与することで、シビリアンコントロールが機能している」と話し、大学側の理解が必要だったという。自衛隊側には講義中の自衛官募集は自粛を求めているが、予備自衛官補募集の紹介はしているという。福岡地方協力本部は「大学への広報活動は他の地方協力本部も行っているが、連続講義開催していることに他本部から驚かれる。今回の市立大学の場合は特異ではないか」と話しており、学校側の要望と講師派遣の調整のタイミングがよかった点を挙げている。

(2010年7月11日付)



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