看板が出ているわけでもないが、ぷーんと大豆の匂いが風に乗って漂ったので豆腐屋さんと分かった。
小倉北区宇佐町に越して30余年。小川豆腐屋は5月31日を持って閉店した。
朝2時に起きて火を入れることから始まる豆腐作りは、近所の人の時計代わりでもあった。2代目店主の71歳、小川謙一さんはこの10年、奥さんと2人で切り盛りしてきた。
宇佐町の前は紺屋町で豆腐作りをしていたという。小倉飯店やおでんの「御多幸」にも卸していた。最後の豆腐を買い損ねた。小倉飯店のマーボ豆腐は絹濃しだが大きくて角が立っていたことを思 い出す。
出来立ての豆腐は大豆の甘さがある。甘味、辛み、渋み、塩加減等々職人が庶民の味覚を鍛えてきた。なんとも豊かな食生活を送ってきたことか。
(2012年6月11日付)