東京製鐵 過労死事件

連載「ひょうきん弁護士2 」

 《事件の概要》

平成8年9月25日、福岡地方裁判所は過労死を否定する行政処分の取消の判決を下し、平成11年3月25日、福岡高等裁判所は国の控訴を棄却する判決を下し、私は勝訴した。

事件は昭和60年9月9日午前8時、東京製鐵若松工場で発生した。

被災者は前日午前5時30分に出勤し、16時間働き、同日午後11時20分に帰宅した。自宅で3時間程度眠った後、当日は再び午前5時30分に出勤して仕事を始め、午前8時に倒れ、急性心筋梗塞による急性心不全で死亡した。

労働組合

事件の依頼を受けると、私は江越弁護士と2人で東京製鐵若松工場にタクシーを飛ばした。そして、労働組合に面会を求めた。

「この事件は明らかに業務によるものです。過労死です。労働組合としてこの事件を取り上げ、会社が労働災害として労災申請をするように交渉してください」。

「この事件が労働災害であるのかどうか、労働組合ではわからない。労働災害として申請するかどうかは会社が決めることなので、労働組合として取り上げることはできません」。

「労働者の権利を擁護するのが労働組合の仕事でしょう」。

「会社が間違ったことをするとは思わないから、会社に任せるしかない」。

「もう事件が起こって3ケ月も経っている。これまで会社が労災申請をしないのだから、今後労災申請をするとは思えない。組合が協力できないというなら、私が個人でするからせめてどんな現場で被災者が働いていたのか見せてもらいたい。見るだけでいいから、会社に見せるように言ってもらいたい」。

「工場は会社のものだから部外者には見せられない」。

「私は部外者ではない。亡くなった従業員の遺族の依頼を受けている」。

「会社にそんなことは頼めない」。

労働組合は冷たかった。被災者は何のために労働組合に組合費を払ってきたのだろうか。こんな労働組合はいらない。

直接会社に、被災者の代理人弁護士だから事故現場を見せるように要求したが拒否された。被災者の妻と同僚から、夫の作業環境は過労死するような劣悪な労働環境だったことを聞き取った。

(黒崎合同法律事務所所長)

2012.4.1

?



Yahoo!ブックマークに登録

サイト内の記事・写真・データ・その他の著作権は小倉タイムスが所有・管理しています。許可なく転載することを固くお断りします。