今問われている 高校の地学教育

平野栄一「現代教育事情130」

高校の教科理科は生物・化学・物理・地学の4科目で構成されています。センター試験で、地学受験者は理科受験者の約4%です。理系学部の入試を地学で受験できる大学は極めて少数、それに従い、地学を開講している高校が少数になっている結果です。

少ない地学の開講

地学を開講しているのは福岡県立では、香椎高、宗像高、東筑高、福岡魁誠高 の4校です。文科省のスーパーサイエンスハイスクールの指定(2011年~2015年)を受けた八幡高、嘉穂高では理科4科目を学ぶことができます。福岡県では地学の教員採用は84年度以降ゼロです。高校の地学教育の実践的理論的蓄積・継承はできにくい実態となっています。文科省発表では、全国の公立全日制普通科高校で2010年度、地学1を開講しているのは23.8%、福岡県は6.2%です。独占企業・多国籍企業の利益に直接的に奉仕しない教科・科目が後景に追いやられ、排除される傾向にあることを示しています。

県教育長は

昨年9月県議会で、議員からの防災教育の質問に対して杉光教育長は「・・職員の指導力向上に努める。・・小中学校において研究指定校を設け、効果的な指導方法や今後の防災教育のあり方について研究をする」と答弁しています。高校の地学教育については言及していません。東日本大震災は国民的規模で自然災害に対する国民の意識を問い質しているのではないでしょうか。

全面発達は教育の課題

理科教育で青年期の全面発達・人格の完成を目指すとき、地学・生物・化学・物理の4科目の学びは是非とも必要です。地学は想像力を豊かにします。SF作家・小松左京の『日本沈没』や宮沢賢治の諸作品は、地質学・鉱物学が基礎になっています。『銀河鉄道の夜』は仏典に示されている宇宙観を背景にしています。徒然草などの古典に登場する月齢、惑星の運動の理解が深まれば月の輝きもさらに豊かにとらえることができるのではないでしょうか。

地域の高校に

高校生の「地学を学びたい」という願いに応えるにはすべての高校に地学を開講しなければなりません。教育の機会均等の原則に従い、当面、県内13の各学区内に1校ずつは地学を開講することが求められます。来年度からの学習指導要領で、理科の必履修科目が2科目から3科目になります。地学を専攻した正規教員採用が必要です。火山・地震の多い日本で、大災害のみならずあらゆる自然災害に備え、また、地球的規模でのエネルギー問題、環境問題、資源問題等の取り組みを進めるためにも、それらについての科学的理解の基盤を形成する地学教育の果たす役割は一層、大きくなっているのではないでしょうか。

地学教育は小・中・高・大だけでなく生涯学習でも必要です。地域の地形を把握し、災害史についても深く理解している地学を専攻した教師の存在は不可欠です。東日本大震災・原発事故は、日本の教育が「競争・評価・効率の教育」から大きく方向転換することを求めています。

今の自然と人間と社会を137億年の宇宙の歴史の到達としてとらえ、人類の歴史的使命を明らかにするためにも地学教育の再考・充実が求められています。  (教育アナリスト)

(2012年2月1日付)

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